企業名
株式会社イトーキ
本社所在地
東京都中央区日本橋2-5-1 日本橋髙島屋三井ビルディング
主要事業
ワークプレイス事業、設備機器・パブリック事業
ITOKIは、位置情報とパフォーマンスデータなど働く人にまつわるデータを複数掛け合わせた新たな分析手法を取り入れ、未来のオフィスづくりに挑んでいます。このデータ融合により、どのような環境が社員の生産性やエンゲージメントを高めるかがより具体的に見えてきました。感覚に頼らない確かなデータをもとに、オフィス環境を持続的に改善し、働き心地の向上を目指しています。これらの試みが、お客様のオフィスづくりをどう変えていくのか、その新しい可能性を伺ってきました。
ABWへの全社員移行
ITOKIでは2018年の本社集約移転を皮切りに、全社的なABW(Activity Based Working)の働き方へ移行しました。営業やデザイン部署だけでなく、総務部など間接部門も含む819人のABWへの移行は大きな変革でした。機密情報やペーパー資料を使う部署は、各部署に合わせたルールを設けながら段階的に固定席→グループアドレス→フリーアドレス→ABWへとシフトしてきました。
位置情報がコミュニケーションを支えた
「Workers Trail」は、「EXOffice」をベースとした、社員の位置をリアルタイムで把握できるツールです。ABWを推進する上で、社員がどこで働いているかがわかることは、必要なコミュニケーションをスムーズにするうえで欠かせません。特にコロナ禍後、全員が毎日出社するわけではない状況下では、必要な時にすぐに人を探し出せることで、出社の機会をより有意義なコミュニケーションへとつなげことができ、人のつながりを深める助けとなりました。
健康やパフォーマンスを支えるデータ活用オフィス
当社では、「Workers Trail」で収集した行動データに、個人と組織のコンディションをはかるサーベイツール「Performance Trail」のデータをかけあわせたオフィスデータ分析「Data Trekking」を活用して、自社およびお客様のオフィス改革を進めています。
Data Trekking
オフィスにまつわるデータを重ね合わせて分析し、生産性向上のための最適な空間デザインを実現する伴走型コンサルティングサービスです。
Performance Trail
パフォーマンスの向上や働きやすい環境づくりを支援する組織サーベイです。
日本初の「Leesman(R)+ Excellent」認証
ABW導入初期から世界最大級のワークプレイス評価調査「Leesman Survey」を活用し、オフィス環境の質を継続的に評価してきました。働き方やオフィスの分析・改善を積み重ねた成果が数値として評価され、日本で初めて「Leesman(R)+ Excellent」認証を取得しました。
「Leesman Survey」は、122か国の9,000以上の拠点、130万人を超えるデータをベースに職場環境を評価する世界最大のベンチマーク調査で、認証を受けたのはわずか26社65拠点のみです。この認証は、ITOKIのオフィス環境が国際的にも高く評価されていることを示しています。
数字が語る、心地よい働き方の進化
継続し続けたことは、社員の離職率低下とエンゲージメント向上という形でも現れました。特に2023年のオフィス改修後には、「楽しさ」の評価が59.3%から75.6%に、「連帯感」が40.1%から63.3%に向上するなど、働きやすさの向上が組織全体の活力へと繋がっています。
データに基づいた継続的な改善と柔軟なオフィス設計は、働き心地の向上と組織全体の活力につながることを証明できたと思います。
パフォーマンスが高い人は、どんな場所で働いているかかがわかる
ITOKIの「Data Trekking」では、先ほどの2023年のオフィス改修でお話しした様に、「Workers Trail」のスペース稼働データと「Performance Trail」 の組織サーベイデータ を活用し、社員のパフォーマンスデータとオフィス利用のデータを掛け合わせた分析が可能です。ここから見えてくるのは、例えばエンゲージメントが向上している社員は、人と会話を交えながら作業できる場所にいる傾向があるなど、どの環境が生産性やエンゲージメントを高めるかが明確に可視化されます。
オフィス改修のパフォーマンス変化を見える化
さらに、オフィス改修前後に「Data Trekking」を実施することでBefore/Afterの効果測定もできます。これにより、ストレス状態が改善された社員は交流の場で過ごす時間が多いといった、指標に基づくスペース利用の傾向が見えてきます。単なる感覚ではない、データに裏打ちされた洞察をもとに、投資効果の高いオフィスを実現するこができます。
ITOKIだからできる知見を活かしたコンサルティング
自社本社オフィス「ITOKI DESIGN HOUSE」では、新しい働き方とそれを実現するためのオフィスのあり方や機能を、データ検証をしながら改善やアップデートを続けてきました。また、多数のオフィスプロジェクトを手掛けてきた経験もあります。この深い知見こそがITOKIの大きな強みです。
深い知見があるからこそ、データを活用し、単なる効果の可視化を超えた、より意味のある「こうありたい」という働き方、オフィスの実現をサポートすることができます。データに裏打ちされた洞察をもとに、働く環境を持続的に改善し、お客様の理想に沿った提案を提供することが可能です。
一方で、社員が使いやすくストレスの少ない環境を提供するためのツール開発にも注力しています。その一例が予約状況を表示する「ホテリングラベル」です。特に、ハイブリッドワークが進んだことで、管理すべきファシリティも増え、予約の管理も難しくなっていました。「予約したはずの席が他の人に使われている」「会議室の空き状況がわかりにくい」という不満も多く耳にするようになったのです。
「ホテリングラベル」は、こうした問題を解消するためのツールです。電子ペーパー画面でリアルタイムに利用状況が表示されるため、席や会議室がどのように使われているかが一目でわかりまし、電池で駆動するため面倒な配線や電源工事なども不要です。さらに、QRコードを使ってその場で簡単に予約でき、アプリを使わずに予約情報が即時反映されるため、管理の手間が大幅に減ります。
目立つ機能や大がかりなデザインにばかり注目されがちですが、こうした小さな使い勝手の向上が働き心地を大きく左右します。こうした細かなストレスを軽減することで、社員にとって魅力的なオフィス環境へと繋がっていきます。
オフィスづくりは”人”に焦点を当てること
オフィスづくりに大切なことは、そこにいる”人”に焦点を当てることです。働き心地のよいオフィスは、様々な人事施策との相乗効果で、パフォーマンスやエンゲージメントを向上させ、採用や離職率、満足度にも大きく影響します。ABWやツール導入を考える際には、設備以上に、従業員の使いやすさや心地よさを中心に設計することが大切です。
アップデートを続けることの価値
オフィス改革は、一度の導入で終わりではなく、その後の継続的なアップデートが重要です。働き方が常に進化するように、オフィスもその変化に合わせて柔軟に対応していく必要があります。これからABWや新しいツール導入を考える企業にとって、導入後の運用を定期的に見直し、働く人に寄り添った改善を続ける姿勢こそが、長期的な価値を引き出す鍵です。
ITOKIのオフィスでは、データを活用した定期的な見直しと改善が、働き心地の向上につながっています。たとえば、働き方に合わせたオフィスの調整を重ねる中で、若手社員の離職率が低下し、組織全体のエンゲージメントも向上していることが確認されています。
新オフィス「ITOKI DESIGN HOUSE」では、データを常時モニタリングし、改修の成果を数値で確認できるようにしています。お客様にはその成果を実際に見学していただける機会も提供しています。ITOKIの取り組みをぜひ現地で体感いただき、社員が集い、働きやすさを追求した空間づくりの参考にしていただければと思います。